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レナサイエンスがクリースビータの市場に名乗り、セルソースは成長鈍化の傾向で下落

日本の株式市場に上場するバイオスタートアップの株価を週ごとにウォッチしていく「バイオベンチャー株価週報」。2022年3月18日金曜日の終値が、前週の週末(3月11日)の終値に比べて上昇したのは44銘柄、下落したのは6銘柄だった。今週は日本の株式市場が堅調で、東証株価指数(TOPIX)は5営業日連続で上昇し、バイオ株も幅広い銘柄で買い戻しが入った。

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この間、上昇率の第1位はGreen Earth Instituteで+49.6%だった。第2位はレナサイエンスで+24.2%、第3位はペプチドリームで+17.8%と続いた。一方、下落率では大きい順にセルソースが-20.5%、スリー・ディー・マトリックスが-12.2%、ステラファーマが-11.4%となっている。

3月18日にストップ高となる498円(前日比+19.1%)を付けた。17日に、同社の主要パイプラインであるプラスミノーゲン活性化抑制因子1(PAI-1)阻害薬のRS5614について、東京医科歯科大学病院とFGF23関連性低リン血性くる病を対象とした臨床研究の実施に向け、共同研究契約を締結したことが発表され、材料視されたようだ。

FGF23関連性低リン血性くる病は、国の指定難病となっており、血中のリン酸濃度を低下させるFGF23の働きが過剰になることで骨の成長や代謝を障害する疾患だ。希少疾患であるものの、その市場は大きいことが知られている。協和キリンの初のブロックバスターに成長すると見込まれる、「クリースビータ」(ブロスマブ)の適応疾患だからだ。クリースビータは以前に協和キリンがピーク時売上高1500億円を目指すとし、直近でも2022年12月期の全世界売上高を1052億円と予想している。

同社によると、米Northwestern Universityとの共同研究によって、PAI-1がFGF23の恒常性を制御する重要な因子であることが示された。また、同社のPAI-1阻害薬(TM5441)がFGF23関連性低リン血症性くる病の治療薬として有効であることを示唆する知見が、マウスを用いた実験で得られていたという。TM5441はRS5614の同効薬で、臨床研究はRS5614で行う予定。

レナサイエンスがクリースビータの市場に名乗り、セルソースは成長鈍化の傾向で下落

今回の契約は臨床研究の段階ではあるものの、そこで有効性が確認されれば、導出への可能性も高まり、その期待感から買われていると考えられる。なお、RS5614については、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)肺炎やその他の呼吸器疾患を対象に、第一三共とレナサイエンスの間でオプション契約が締結されており、製薬業界の関心も得られそうだ。

3月17日にストップ高となる707円(前日比+16.5%)を付けた。SMBC日興証券が、同社の目標株価を引き上げており、その影響とみられる。ステムリムが塩野義製薬に導出しているレダセムチドは、2021年12月に、急性期脳梗塞患者を対象に実施された国内第2相臨床試験で、主要評価項目を達成したと発表された。この発表により、ステムリムの株価は一時1000円を超えた。

しかし年末年始あたりから市況の悪化などが要因で値下がりが続き、先週末には600円近辺にまで落ち込んでいた。第2相成功の材料で上げた値幅がほとんど失われていたため、買い戻しやすい水準だったといえる。ステムリムの岡島正恒代表取締役は、3月11日の決算説明会で、「塩野義製薬によるグローバル第3相試験の開始時にも、マイルストーンが発生する。詳細は非公開だが、かなりの金額になる」と発言しており、第3相開始とマイルストーン収入に対する期待が集まっているようだ。

また、今回の決算説明会では、表皮水疱症に対する遺伝子治療に言及した。同社は患者の自家間葉系幹細胞(MSC)に、正常なVII型コラーゲン遺伝子をレンチウイルスベクターで導入するex vivoの遺伝子治療の開発を目指している。表皮水疱症に関しては、遺伝子導入細胞やウイルスベクターを用いた複数の遺伝子治療プログラムが海外で進んでおり、早ければ2022年中の登場もあり得る状況だ。レダセムチドの表皮水疱症を対象とした開発は、当局からさらなる症例のデータ追加を求められ承認申請が遅れていることから、ステムリムも遺伝子治療の開発が急がれる。

3月16日にストップ安となる274円(前日比-22.6%)を付けた。要因は15日に発表された業績の下方修正とみられる。2022年4月期の業績予想として、同社は当初その事業収益を23億7900万円と見込んでいたが、15億900万円に修正した。理由はCOVID-19の流行再拡大で、同社は「オミクロン株の急速なまん延により、特に欧米において当社がターゲットとする不要不急の手術が大規模に延期され、販売実績が悪化した」と説明している。また、売上高の減少に伴い在庫の回転にも遅れが生じ、原価率が大幅に低減された新製法による製品への転換が遅れ、原価率が下がり切らない見込みとなったことも影響しているという。

ただ、同社の止血剤関連の売上高は順調に増加しており、今回の下方修正も一過性の要因と考えられる。このため今後の同社の成長路線に大幅な変更は無いとみられ、17日、18日は値を戻している。なお、同社の中期経営計画では来期(2023年4月期)の営業利益黒字化を見込んでいるが、今回の下方修正に伴う計画への影響は精査中で、同社は2023年4月期以降に改めて公表するとしている。

3月17日に、ストップ安となる2830円(前日比-19.8%)を付けた。16日に発表した2022年第1四半期(2021年11月~2022年1月)の決算で、売上高および営業利益が、期初の業績予想に対して進捗率が22%~24%にとどまった。特に売上高は、前四半期(2021年9月~11月)に比べて横ばいで、成長鈍化の傾向が見て取れた。これまで業績の上方修正を繰り返してきた同社に対し、市場はサプライズを期待していた向きもあり、この進捗率に対して落胆が大きかったようだ。

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順位社名株価(終値)騰落率
3月11日3月18日
1Green Earth Institute56384249.6%
2レナサイエンス40149824.2%
3ペプチドリーム1728203517.8%
4ファーマフーズ1859216416.4%
5ステムリム63772714.1%
6キッズウェル・バイオ37542312.8%
7アンジェス29332912.3%
8クリングルファーマ71679811.5%
9ペルセウスプロテオミクス34638210.4%
10モダリス3163479.8%
11免疫生物研究所2903189.7%
12Delta-Fly Pharma118312979.6%
13メディシノバ2652909.4%
14セルシード1321449.1%
15トランスジェニック3844188.9%
16そーせいグループ137214908.6%
17ステムセル研究所282530658.5%
18キャンバス1671818.4%
19ファンペップ2072248.2%
20リボミック1501628.0%
21ヘリオス112012097.9%
22シンバイオ製薬7267837.9%
23サスメド104511237.5%
24窪田製薬ホールディングス1361467.4%
25フェニックスバイオ4654987.1%
26メディネット43467.0%
27オンコリスバイオファーマ5615996.8%
28カルナバイオサイエンス97010356.7%
29オンコセラピー・サイエンス62666.5%
30リプロセル2082216.3%
31デ・ウエスタン・セラピテクス研究所1881995.9%
32ナノキャリア2452585.3%
33メドレックス1111164.5%
34総医研ホールディングス3123264.5%
35タカラバイオ220522994.3%
36カイオム・バイオサイエンス1721794.1%
37ジーエヌアイグループ128113253.4%
38ヒューマン・メタボローム・テクノロジーズ5856053.4%
39ブライトパス・バイオ92953.3%
40ラクオリア創薬7587813.0%
41ジャパン・ティッシュ・エンジニアリング4734873.0%
42プレシジョン・システム・サイエンス3974072.5%
43ソレイジア・ファーマ81821.2%
44ユーグレナ7467541.1%
45テラ7978-1.3%
46DNAチップ研究所435423-2.8%
47サンバイオ15261393-8.7%
48ステラファーマ687609-11.4%
49スリー・ディー・マトリックス345303-12.2%
50セルソース33252643-20.5%