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Apr

目盛線の書式を1本だけ変更するには?

グラフに目標値を示す場合など、「目盛線の書式を1本だけ変更したい」と感じることもあるだろう。しかし、残念ながら、Excelのグラフツールはこういった書式指定に対応していない。目盛線の書式を1本だけ変更するには、「図形」や「複合グラフ」を活用する必要がある。今回は、その詳しい手順を解説していこう。

目盛線の書式指定について

まずは、目盛線の書式指定について“おさらい”しておこう。今回は、以下に示した棒グラフを例に話を進めていく。

このグラフは、ある施設の入場者数をまとめたもので、その目標人数は毎月5,000人に設定されている。これを分かりやすく示すために、「5,000の目盛線」だけを赤色に変更する場合を考えてみよう。

まずは、一般的な手順で書式変更を試してみる。「5,000の目盛線」を右クリックし、「枠線」コマンドを使って「色」や「太さ」の書式を変更する。

すると、以下の図のように、すべての目盛線の書式が変更されてしまう。

このような結果になるのは、それぞれの目盛線を個別に扱えない仕様になっていることが原因だ。つまり、「すべての目盛線の書式を変更する」は可能であるが、その中の「1本だけ書式を変更する」というのは不可能な仕様になっている訳だ。

このため、通常の方法では「1本だけ目盛線の書式を変更する」は実現できない。

「図形」コマンドを使った目盛線の描画

では、どうすれば、目盛線の書式を1本だけ変更できるだろうか。一つ目の方法として思いつくのは、「図形」コマンドの「線」を使って自分で目盛線を描画する方法だ。

グラフ内に図形を描画するときは、グラフを選択した状態で図形の描画を開始するとよい。すると、「図形」と「グラフ」が連動するようになり、グラフの位置を移動したときに、図形も一緒に移動されるようになる(詳しくは前回の連載を参照)。

今回の例の場合、

という手順で操作を進めていけばよい。

続いて、マウスをドラッグして「線」を描画する。このとき、「Shift」キーを押しながらマウスをドラッグすると、水平の線を描画できる。

おおよその位置に「線」を描画できたら、描画ツールの「書式」タブを選択し、「図形の枠線」コマンドで線の書式を指定する。

その後、画面表示を拡大し、「線」が目盛線にちょうど重なるように配置する。「線」の長さを調整するときは、「Shift」キーを押しながらハンドルをドラッグすると、線を水平に保ったまま長さを変更することができる。

目盛線の書式を1本だけ変更するには?

このように作業を進めていくと、(見た目上は)目盛線の書式を1本だけ変更することが可能となる。

少し強引な力技ではあるが、こういった直接的な手法が役に立つケースは意外と多い。もちろん、目盛線の書式変更だけでなく、他の要素の書式変更にも活用できる。たとえば、「図形」→「テキストボックス」を描画し、「5,000のラベルだけを赤色にする」などのカスタマイズに応用することも可能だ。

近似曲線を応用した目盛線の描画

次は「棒グラフ」+「折れ線グラフ」の複合グラフを使って、目盛線を「折れ線」で示す方法を紹介していこう。

まずは、「折れ線」として表示するデータを追加する。今回の例では5,000の位置に「折れ線」を一直線に表示したいので、すべてのデータが5,000の系列を用意する。

データ表を準備できたら「集合縦棒」のグラフを作成する。続いて、いずれかのデータ系列を右クリックし、「系列グラフの種類の変更」を選択する。

「系列グラフの種類の変更」が表示されるので、先ほど追加した「目標値」の系列を「折れ線」に変更し、「OK」ボタンをクリックする。

このように作業を進めていくと、5,000の位置に横一直線の「折れ線」を描画できる。ただし、この直線はあくまで「折れ線グラフ」として処理されているため、その両端に若干の隙間ができてしまう。

これを隙間なく、グラフの端まで伸ばすには「近似曲線」を活用するとよい。「折れ線」を右クリックし、「近似曲線の追加」を選択する。

近似曲線の設定画面が表示されるので、「線形近似」を選択し、「近似曲線名」(凡例に表示する文字)に適当な文字を入力する。続いて、「前方補外」と「後方補外」に0.5を指定する。

上記のように指定すると、グラフの端まで伸びる直線(近似曲線)を描画できる。ちなみに、「前方補外」や「後方補外」は近似曲線を前後に伸長する設定項目となる。ここに「0.5」を指定すると、半項目分だけ近似曲線(直線)を左右に伸ばすことが可能となる。

続いては、「点線」で描画されている近似曲線の書式を変更していこう。近似曲線(点線の部分)を右クリックし、「枠線」コマンドで線の色、太さ、種類を指定する。

このように作業を進めていくと、(見た目上は)5,000の位置だけ書式が異なる目盛線を実現できる。

なお、このグラフをよく見ると、凡例に3つの項目が表示されているのを確認できると思う。具体的には、「棒グラフの系列」、「折れ線グラフの系列」、「近似曲線」の3つが凡例に表示されている。

これらのうち「折れ線グラフの系列」は、「近似曲線」を描画するために利用したデータとなるので、凡例に残しておく必要はない。紛らわしいので削除しておこう。

凡例をクリックして選択し、その後「折れ線グラフの系列」の凡例を再クリックすると、凡例を1項目だけ選択できる。この状態で「Delete」キーを押すと、その項目を凡例から削除できる。

以上で、目盛線の書式を1本だけ変更する作業は完了となる。最後に、グラフの見た目がよくなるように各要素の書式を調整する。今回の例では、

・グラフ タイトルの入力・棒グラフの太さを変更・棒グラフに影を追加・各要素の文字の書式を変更

といったカスタマイズを行った。

このように「複合グラフ」と「近似曲線」を活用して、目盛線の書式を1本だけ変更する方法もある。「折れ線」(近似曲線)で示す系列を2つ用意すれば、2本の目盛線について書式を変更することも可能だ。

少し手間はかかるが、好きな位置に、好きな書式で「横線」を描画できるテクニックとして、覚えておくといつか役に立つだろう。