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次世代機から占うゲームコントローラーの未来像

私事ながら、筆者はわりと“入力”にはこだわるタチである。どの職場においても、自分の手に馴染んだマイキーボート、マイマウスを持参するし、ノートPCもオーダー時にUS配列へのカスタマイズを怠らない。2014年の時点では、US配列のSurfaceタイプカバーが日本のオンラインストアで販売されていなかったため、カナダに立ち寄った際に購入したぐらいだ。

ゲーム開発においても、若手の頃からユーザーインターフェイス部分の設計を担当することが多く、直接担当しなくなってからも、画面レイアウト、メニュー階層、フォント、アイコンの視覚的デザインといった細部に至るまで多くの注文を出す、とかく厄介で面倒臭い開発者であったと自認している。

ところが、コンソールゲームの開発者にとって、どれだけ野心的に頑張っても手の届かない領域がある。それは入力デバイスであるゲームコントローラーそのもののデザインで、こればかりは手の出しようがない。ゲームデザインに合わせてハードウェアと一体で開発できるアーケードゲームだけが例外で、大型体感ゲームにまだまだ勢いがあった頃は、アーケードゲームの開発者を大変うらやましく思ったものだ。

中にはセガの「電脳戦機バーチャロン」や、コナミの「beatmania」、「Dance Dance Revolution」、ナムコの「太鼓の達人」といった、専用コントローラーを採用したゲームも存在するが、これらはどれもアーケードゲーム発のゲームだ。唯一、カプコンの「鉄騎」だけが例外で、コンソール発にして、専用コントローラーなくしてはプレイできないという、常識を打ち破った意欲作だった。

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これら、ごく一部の例外はあったものの、コンソールゲーム機の世代が移り変わり、スマホの登場によってゲームプレイ環境が多様化しても、ハードウェアによって入出力の限界が規定されるという大原則は変わっていない。ソフトウェア単独でハードの制約を打ち破ることはできないから、次世代機のスペック、ことコントローラーの仕様については、毎度毎度大きな期待を寄せてしまう。

次世代機から占うゲームコントローラーの未来像

標準コントローラーに準拠したもの以外で、どのハードに対しても発売される体感を優先した特別な入力ペリフェラルは、ガンコントローラーとハンドルコントローラーくらいのものだろう。ジャンルが確立しており多数のタイトルの発売が想定されることから、コントローラーにもある程度の市場性が見込めるからだ。アーケードコントローラーにも根強いファンはいるが、一時の勢いは今はないように思う。PCゲーム特有のものとしては、左手用ゲーミングキーボードが生き残っているくらいだろうか。どのプラットフォームにおいても、あまりにも奇をてらったような特殊なコントローラーは影を潜めてしまった。

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その一方で、ゲームコンソールの標準的なゲームコントローラーの躍進は大きい。PSシリーズのコントローラーは、DUALSHOCK 3以降はPCで動作させることが可能だ。また、Xboxシリーズのコントローラーなら、Xbox360以降、特に問題なくPCで動作する。スマホに対しても、BluetoothをサポートするDUALSHOCK 4やXbox Oneコントローラーなら、iOSでもAndroidでも使用することができるようになっている。

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PCゲームの世界では、即応性や同時入力時の認識精度の観点から、キーボードとマウスによる保守的なゲームプレイを好むゲーマーが多い。とはいえ、それほど複雑で素早い入力が要求されないゲームの場合、コントローラーを好む人も少なくない。PCゲームの取材において、開発者がコントローラーで操作しながらプレゼンテーションする姿を目にすることも多くなった。ハンズオンイベントのプレイ環境に、コントローラーが用意されていることも珍しくない。

実際、コンソール標準のゲームコントローラーでの入力は、人にやさしい。これは、コンソールゲーム機が玩具の延長に始まり、若年層をカバーするという至上命題をクリアしながら、ゲームプレイの楽しさを主眼に改良が重ねられてきたからこその成果だと言える。本格的な3Dゲームが楽しめるようになったPS2やDCの頃までは、アナログスティックやトリガーボタンの追加が盛んに行われたものの、それ以降は現世代のコントローラーに至るまで、ボタンの総数はそう大きく変化していない。

冒頭で述べたように、標準ゲームコントローラーには、つくりによってはゲームデザイン上の制約となってしまったり、提供できるゲーム体験の限界を規定しかねないというデメリットがある。その反面、ボタンやスティックの配置や形状から、操作体系を直感的に理解しやすいという大きなメリットがある。また、ボタン総数が限られているがゆえに、同一ジャンルのゲームにおいて、スタンダードな操作が確立しやすいこともメリットとして挙げられるだろう。標準的な操作に準拠したゲームであれば、ゲーマー側は慣れによる恩恵を受けることになり、初めてプレイするゲームでも操作を習得するところから始める必要がなくなる。ゲームが持つ遊びの本質に触れるまでのハードルが下がるというわけだ。

【Evolution of Video Game Controllers】

任天堂ゲームウォッチを前身にファミリーコンピューターで採用されたパッド型ゲームコントローラーが登場してから、すでに36年が経過した。これまでのコンソールゲーム機では、出力側の表現力が豊かになるとともに、入力側も進化を続けてきた。ボタンの追加に始まり、アナログスティックや感圧ボタンの採用、ジャイロや加速度センサー、ポジション検出、無線通信、バッテリー、サブディスプレイといった性能を強化する改良はもとより、ボタンのカスタマイズやカラーバリエーションといった物理機構的な部分にも、常に新しい提案が行われている。

来年2020年の今頃には、いよいよ次世代のハードウェアが発売されていることだろう。次世代機の入力ペリフェラルに相応しい進化には、いったい何が考えられるだろうか。