02

Oct

第947回:DSS(Dynamic Spectrum Sharing)

4Gの電波に5Gの信号を混ぜて通信

 DSSとは、LTEの使用する周波数帯の一部もしくは全体に5G NRを導入する技術のことです。日本語で「動的に波長分布を分け合う」を意味する英語「Dynamic Spectrum Sharing」からきています。

 これまで、新しい無線アクセス技術は2G、3G、4Gでそうであったように、異なる周波数ブロック上で展開されてきました。このため、事業者は新しい世代を割り当てるための新たにスペクトルを購入するか、既存のスペクトルを再編成しなければなりませんでした

第947回:DSS(Dynamic Spectrum Sharing)

 事業者は、5Gサービスのために幅広い帯域を必要とし、そのために、新しい中帯域(3.5~6GHz)・高帯域(ミリ波)が割り当てられました。特に新たに割り当てられたミリ波周波数には極めて広い帯域があり、これを使うことで、事業者は5Gの超高ピークレートと低遅延を達成することができるようになります。この周波数は、混雑した4Gネットワークをオフロードする方法として有効なはずです。

 反面、ミリ波は電波の届く範囲も狭く、サービスエリア構築には相当の時間がかかります。また、中帯域(3.5~6GHz)の5G NRのサービスエリアも、新規の設備の構築が必要であったり、それも衛星通信への干渉を考えなければならなかったりで、5Gの通信可能エリアはなかなかエリアが広がりそうにありません。

 エリアをできるだけ早く広げられるように、またモビリティの確保、つまり移動する利用者にも通信が使えるように、5Gシステムに関しても3.5GHz以下の周波数帯も使用したいと事業者側は考えているようです。

 そこで解決策として考えられているのが、4Gの周波数をLTEと5Gで分け合う「DSS」です。簡単に言うと、この技術は既存の4Gの基地局から発せられる電波の中に5Gの信号も混ぜて4Gと5Gのどちらでも使えるようにしようというものです。基地局のエリア内にいる、既存のLTE端末はこのエリアをLTEエリアとして、5G端末は5Gエリアとして認識することができるようになります。

 また、低周波数帯と中周波数帯、あるいは低周波数帯と高周波数帯のアグリゲーションで5G NRのカバレッジ拡張を実現する「インターバンドNR キャリアアグリゲーション」も利用すれば、まずはDSSで低周波数帯での5Gサービスを開始し、その後このアグリゲーション技術で、中周波数帯や高周波数帯の5G NRとの併用が実現できます。スマートフォンでも屋内やセルエッジ部で数百Mbpsといった高速データ通信を実現できるようになるでしょう。